Stories

家を出る時、玄関前で
深呼吸して「よし、いこう」って。

小引 久実 山陰中央新報社

山陰中央新報社
編集局報道部・27Years old
小引 久実

ときどき、スマホの着信音が空耳で聞こえるんですよ、何も鳴っていないのに「何かが起きてるんじゃないか」って。職業病ですかね(笑)。

小さい頃から凶悪事件のニュースを見ると「何でこんなことが起きるのかな」ってよく考えていました。大学時代は東京で法律を学んだんですけど、勉強するほど、法律にも限界があるんだって感じましたね。困っている人がいてもそれを助ける法律が限られていたり、裁判所の判断が社会通念から決まることも多かったりで。世の中の流れが変わらないと人を助けることは難しい。それなら、もっと生活の現場から社会や制度を変えることができないかって考えたんです。誰かの声を届けて世の中が変わるきっかけになりたい。そういう思いから記者を目指しました。

入社5年目で、事件や事故、教育問題などを担当しています。印象に残っているのは、ある高齢男性が亡くなった奥さんの遺体を放置してしまった事件。夏の暑い頃で現場の家は生ゴミが放置され、男性は誰にも相談できないまま社会から孤立していました。裁判では「セルフネグレクトでは」とも言われ、この事件をもとに高齢者の孤立の問題を大きな記事にまとめました。それは、つながりの持てる社会の形、相談できる環境づくりとか、そういう課題を考えるきっかけになりたくて。それから学校の先生たちの過酷な労働状況を記事にして「現場の声を伝えてくれてありがとう」と言ってもらえたことも、印象深い経験です。

そうは言っても、正直、まだ自分の力で何かを大きく変えられた実感はないんです。でも、社会が少しでも良くなるよう心に届く記事を書き続けたいです。地道に。よく家を出る時に玄関でふーって深呼吸するんです。「よし、行こう」って。現場に出て人の声を聞き、物事の背景を考えて記事を書く。そうやって働く自分は、けっこう好きかもしれません。

PROFILE

山陰中央新報社

小引 久実 Kobiki Kumi

1998年岡山市生まれ。早稲田大学法学部を卒業し、2021年に山陰中央新報社に入社。記者として経験を積み現在は主に司法分野を担当。就職のため移り住んだ山陰では、日本海の美しさに感動する。実家では猫を13匹飼っている。「最近、松江の保護猫カフェを取材して楽しかったです。猫はかわいいなあ」

COMPANY PROFILE