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13:15 安来市のコンビニで買ったアイスを食べながら村穂達也は1本の棒から白樺の森を想像した。

村穂達也 ひろせプロダクト

コンビニでアイスを買う。人はたいてい、氷の冷たさや砂糖の甘さを喜びながら食べる。けれど、食べ終えたあとに手に残る木の棒のことまでは、あまり考えない。その棒がアイススティックという名前であることも、知らないかもしれない。けれど、その1本がなければ、私たちはアイスを最後まで食べることができない。夏のささやかな楽しみを、1本の棒が人知れず支えている。

そのアイススティックをつくっている会社が島根にある。安来市に本社を置くひろせプロダクト。アイス用のスティックや木べら、竹串、木製カトラリーなど、食品に関わる竹製品や木製品を製造・販売している会社だ。コンビニのホットスナックコーナーに並ぶアメリカンドッグやフランクフルトに使われる竹串の8〜9割は、同社の商品だという。

「一度はうちの製品を手に取られたことがあるんじゃないかなと思います」

そう話すのは、ひろせプロダクトの村穂達也。現在、営業として国内の取引先を担当している。村穂自身も、以前はアイススティックのことなど考えたことはなかった。けれど働き始めて、ものの見え方が変わった。

「アイススティック1本、竹串1本を皆さまのお手元に届けるまでに、本当に多くの人が関わっているんだと気づいたんです」

ロシアの白樺が切り出され、シベリア鉄道で運ばれ、中国の工場でスティックやスプーンの形に加工される。口当たりを良くするために面取りされ、ささくれや汚れがないかをカメラと人の目で確かめる。日本へ届いたものは、ひろせプロダクトの選別機にかけられ、目視では見落とされるわずかな不良も取り除かれる。そうしてようやく、私たちが何気なく手に取る1本になる。

「誰かが材料を選び、誰かが形にして、誰かが検品して、誰かが運んでいる。そうした仕事を支えるための仕事も、さらにたくさんある。この仕事をしていると、そういうことに意識が向きます」

それは竹串やアイススティックだけの話ではない。車を運転すれば、アスファルトの滑らかさを感じる。部屋に帰って明かりが点くのは、電気技師の仕事があるからだ。リビングに置かれたギターで小さなペグが弦を支えている。以前なら気にも留めなかった、暮らしの風景の一つひとつに、今は誰かの仕事が見える。

村穂は松江で生まれ育った。高校では建築を学んだが、やがて関心はビジネスへ移った。大学では経営を学び、将来は海外で大きな仕事を動かしたいと考えるようになった。

就職活動では、地元に貢献しながら海外とも関われる会社を探した。その時に出会ったのが、ひろせプロダクトだった。竹や木という自然素材を扱いながら、国内の大手食品メーカーと取引し、海外にも拠点を持つ。ニッチだが、確かな仕事がある。ここで働いてみたい。村穂はそう思った。ただし、問題がひとつあった。その会社は求人を出していなかったのだ。

村穂は諦めなかった。勇気を出して、その会社の代表に会いに行った。

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求人は出ていなかった。それでも村穂は、ハローワークを通じて代表に連絡を取り、会いに行った。

「とにかく行動しないとダメだなっていうのはあったんです」

その主体性を見込まれ、村穂は採用された。現在は営業として、大手企業の担当者と向き合う。竹を使った環境負荷の少ないアメニティを、新たな会社の主軸へ育てる構想も練っている。

仕事で大切にしているのは、約束を守ること、人のせいにしないこと、小さな仕事ほど雑にしないことだ。

「紙を折るにしても、端と端をぴったり合わせないといけないじゃないですか。最初は小さなズレでも、長い目で見たら大きなズレになるんです」

自分が関わった商品が百円ショップの店頭に並ぶことがある。家族と買い物に行き、「これ、うちのだよ」と話すこともある。

「誰かの役に立てる仕事っていうのは、やっぱりやりがいを感じます」

村穂は、何気ないものを何気ないまま見過ごせなくなった。小さな部品にも、1本の棒にも、誰かのこだわりがある。誰かの手間がある。誰かの責任がある。

「社会はみんなで支え合って動いているんだなと思います」そう話す村穂の仕事も、今日も誰かの手もとで静かに社会を支えている。

PROFILE

ひろせプロダクト

村穂達也 Tatsuya MURAHO

2000年生まれ。松江市の工業高校で建築を学び、大学では関西へ進学。在学中にひろせプロダクトの代表へ直談判し内定を得る。現在はひろせプロダクトでアイススティックや竹串などの企業営業に従事。環境負荷に配慮した竹製品の普及にも尽力する。

COMPANY PROFILE

1999年創業の竹・木製品メーカー。コンビニのホットスナック用竹串・木串で高い国内シェアを持ち、竹製アイススティックや竹ストローなど環境配慮型製品にも取り組む。